パーキンソン病
パーキンソン病
どんな病気か?
50歳以降に発症することが多く、いくつかの特徴的な症状がみられます。手足が震える、筋肉がこわばる、動作が遅くなる、歩きづらくなる等でゆっくりと症状が進行する神経変性疾患で、10数年後には寝たきりになる患者さまもいます。有病率は日本人の約1,000人に1人がこの病気にかかると言われています。
どんな病気か原因は何か?
原因は現在も不明です。脳の病理学的変化では、中脳の黒質ドーパミン性神経細胞の変性が確認されています。
パーキンソン病は脳が出す運動の指令が筋肉にうまく伝わらず、滑らかな動作ができなくなってしまう病気です。これは脳(中脳)の黒質という部分の神経細胞が減ってしまうのが原因です。
この神経細胞は「ドーパミン」という神経伝達物質をつくり、「ドーパミン」を使って体を動かす機能を調節する働きをしています。黒質の神経細胞が減ると「ドーパミン」も減ってしまうため、運動の情報が伝わらず様々な症状が出てきます。
【症状について】
<3大症状>
★手足のふるえ
★筋肉のこわばり
・筋肉が固くなる
・関節の曲げ伸ばしに抵抗がある(固縮)
★動きの緩慢(無動)
・無意識に動作が遅くなる
・表情がほとんど変わらない(仮面様顔貌)
上記以外の症状
【運動の症状】
・安静時にふるえる
・じっと動かないでいる
・動作が緩慢
・動き始めるのに時間が掛かる
・姿勢が前かがみ
・小さい歩幅でちょこちょこ歩く
・前後、側方に倒れやすい
・最初の1歩がすくみやすい
・ボタン掛けなど細かい動作が遅い
・声が小さい、書く文字が小さい
・表情が乏しくまばたきが少ない
・物を飲み込みにくい、よだれが出る
【自律神経の症状】
・便秘
・立ちくらみ
・排尿障害、尿失禁
・手足が冷える
・足、下肢に汗が出にくい
・むくみやすい
【その他の症状】
・筋肉がこわばる
・手足の変形
・症状が軽い側へ体が傾く
・幻視
・うつ
症状の現れ方
初発症状は片方の手のふるえ(安静時震戦)や歩きづらさ(歩行障害)が多く、前かがみで小刻みに歩くようになります。筋肉のこわばり(歯車様固縮)や手足のふるえ(震戦)などは、最初は片側だけですが、進行するにしたがって反対側にも現れます。
1歩目が出にくくなり(すくみ足)、歩幅も小さくなります(小刻み歩行)。全体に動作が遅くなり(動作緩慢)、方向転換や寝返りが苦手になります。歩いているうちに足が体に追いつかなくなり(突進現象)、姿勢の反射も障害されている(姿勢反射障害)ために前のめりの姿勢になり立て直せずに転倒することもあります。
その他では表情が乏しく(仮面様顔貌)、おでこや頬が脂っぽくなります。自律神経系では、便秘や立ちくらみ(起立性低血圧)が現れます。精神症状として、うつ状態もみられることがありますが、一般には知能は正常に保たれます。
検査と診断
左右差のある安静時震戦を示し、筋肉のこわばり、すくみ足、小刻み歩行、動作緩慢などがある場合、抗パーキンソン病薬の効果が認められたら、まずパーキンソン病と考えられます。類似した症状を示す疾患には、脳血管性パーキンソニズム、薬物性パーキンソニズム、多系統委縮症といわれる変性疾患などがあり、これらを除外することが必要になります。
そのためには、頭部MRIなどで多発性脳梗塞などの脳血管障害がなく、明らかな脳萎縮がないことを確認します。また薬剤性の場合は服薬を中止することで症状が改善するため、パーキンソニズムを呈する可能性のある薬剤を服用していないか確認することも大切です。このような変性疾患に関しては、初期の段階ではパーキンソン病との区別が困難な場合があり、神経内科のある専門の医療機関を受診して相談することがよいでしょう。
治療の方法
治療の基本は抗パーキンソン病薬の内服治療です。中心となるのはドーパミンの前駆物質レボドパ(L‐ドーパ)で、脳内で減少したドーパミンを補充します。しかし長期間の使用によって効果が減弱したり、血中濃度の変化に応じた症状変動(ウェアリング・オフ現象)、自分の意志とは無関係に口元が動いたり体がくねくねする不随意運動(ジスキネジア)が現れることがあります。また吐き気、不整脈などの合併症も認められることがあります。
近年では、レボドパの内服量を減らし、補助薬を併用することが推奨されています。補助薬にはドーパミンを受け取りやすくするドーパミン受容体刺激薬(ビ・シフロール、レキップなど)、ドーパミン放出を促進するアマンタジン(シンメトレル)、ドーパミン分解阻害薬のセレギリン(エフピー)などがあります。これらの併用で副作用を少なくし、効果を持続させることが可能になります。
内服治療でコントロールが困難な症例では、定位脳手術(原因脳神経細胞の破壊)や深部脳刺激法(継続的脳神経への電気刺激)などの外科的治療法が検討されます。
病気に気付いたらどうする?
手のふるえには、いくつかの種類があります。パーキンソン病の症状で特徴的な安静時震戦。手を伸ばすなど動かすとでる姿勢時震戦、緊張すると頭や手のふるえが強くなる本態性震戦、甲状腺機能亢進症を伴う震戦などがあれば、神経内科のある専門の医療機関を受診することが必要です。
日常生活では、転倒による骨折や便秘などの予防が大切です。また病状が進行して長期臥床した場合でも、仙骨部などの床ずれ(褥瘡)や肺炎(誤嚥性肺炎)が生じる可能性があるため、その予防が重要となります。
パーキンソン病と鍼灸治療
現在、パーキンソン病は残念ながら完治することはできませんが、鍼灸治療で症状の改善及び進行を遅らせることは可能です。中国でパーキンソン病の患者への鍼灸治療の研究が行われ、患者の脳の血液循環を改善したという結果がでました。また、鍼灸はパーキンソン病の原因となる黒質に刺激を与えて、ドーパミンの分泌を促進し分泌量が倍増したことも証明されました。
パーキンソン病の進行により転ぶ事が多くなり、大怪我をする危険が多くなります。パーキンソン病で転ぶ原因は筋肉のこわばり(筋固縮)によるものが多いです。パーキンソン病の症状の中でも特に筋固縮と無動障害に対して鍼灸治療で緊張した筋肉をやわらげることができますので効果が高いです。鍼灸治療以外でも筋力を強化するための他動運動や関節の拘縮を予防するための関節可動域運動を行うことも大切です。
パーキンソン病は自律神経機能の症状もみられるため、鍼灸で自律神経の調整や免疫力アップによって、自然治癒力を高めることも目的となります。また、鍼灸治療と西洋医学との併用により相乗効果が認められています。今のところ完治する治療法がないため、鍼灸で頑張ってみる価値があると思います。
鍼灸は以下の症状改善が見られます。
注)パーキンソン病に対して鍼灸治療は個人差や症状がよりますので、すべての方に効果が表れるものではありません。
・歩行困難の改善、特に早期や症状が軽い方に効果が得られやすい。
・西洋医学の薬などの副作用を軽減する、薬の効く時間が長くなった。
・振戦の症状が軽減した。
・筋肉の緊張による肩・背中の凝りが解消された。
・パーキンソン病による自律神経失調症が改善された。
・姿勢のアンバランスによる腰痛や足の痺れなどが解消した。
・足のむくみが緩和された。
・パーキンソン病によるうつ症状が軽減した。
・家族と一緒でないと来院できなかったが、一人で通院できるようになった。
・パーキンソン病の方のQOL(生活の質)が高まった。
もしあなたがこのような症状に悩まされているなら、ぜひ当院にご相談ください。
私たちは専門的な治療や対処法を提供し、あなたの健康をサポートします。