概 要
概 要
下痢は大便中の水分が増加した状態であり、健康な便はバナナ状の便で水分量は通常60~70%でありますが、80~90%に増えると軟便や泥状便となり、90%以上で水様便になります。下痢便や軟便が繰り返し起こり、腹部不快感や腹痛を伴う状態を下痢または下痢症と呼びます。
下痢は老若男女に起こり、『急性下痢』は2週間以内で治癒しますが、2週間以上4週間以内の場合は『遷延性下痢』、4週間以上続く場合は『慢性下痢』となります。急性下痢の原因には食べ過ぎ、飲み過ぎ、感染症、食中毒、生活習慣、体質、薬の影響があります。
慢性下痢の場合は潜在的な病気が考えられますので、内科または消化器科の医師に診てもらいましょう。
下痢や軟便の原因を特定するためには、食事や飲み物、生活習慣、ストレスなどの要因を挙げ、2、3日前からの症状を考えることが重要。特に食あたりや水あたり、消化不良、ストレスなどが考えられる。
通常、腸は一定の速度で動き、水分を吸収しながら健康な糞便を形成する。下痢の場合、腸管の動きが速すぎたり吸収能力が低下したりすることで、水分の吸収が不十分になり水っぽくなる。
下痢は分泌性下痢、浸透圧系下痢、運動亢進性下痢の3つに分類され、それぞれ異なる原因が存在する。分泌性下痢は腸管内の分泌液が過剰な状態、浸透圧系下痢は浸透圧を上げる成分が影響し水分吸収が不十分、運動亢進性下痢は腸の動きが亢進して水分の吸収が不十分になる。

原 因
原 因
下痢の原因はさまざまですが、主に以下のようなものが挙げられます。
•感染性のもの(細菌・ウイルスによる食中毒や胃腸炎)
•食事の影響(刺激物、冷たいもの、脂っこいものの摂取)
•ストレスや自律神経の乱れ(緊張や不安が引き金になる過敏性腸症候群など)
•過敏性腸症候群(IBS)
•消化不良(食べ過ぎや飲み過ぎ)
•腸の炎症や疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)
症 状
下痢の主な症状として、以下のようなものがあります。
•水様便や泥状便の排泄
•腹痛や腹部の張り
•吐き気や嘔吐
•脱水症状(口の渇き、倦怠感、めまい)
•発熱を伴う場合も
特に、長引く下痢や血便が見られる場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
日常生活での注意点
下痢の予防や改善のために、日常生活で気をつけるべきポイントを紹介します。
1.冷たいものや刺激物を控える
アルコール、カフェイン、辛い食べ物、脂っこい食事は控えめに。
2.腸にやさしい食事を心がける
お粥、うどん、スープなど、消化の良い食事を選ぶ。
乳製品や食物繊維が豊富な食べ物は一時的に避けることも。
3.水分補給を忘れずに
脱水を防ぐため、経口補水液や白湯をこまめに摂取する。
4.ストレス管理を行う
リラックスする時間を作り、適度な運動や睡眠を大切に。
5.冷え対策をする
腹巻やカイロを使い、お腹を冷やさないようにする。
東洋医学的な考え方
東洋医学では、下痢は「脾(ひ)・胃・腎(じん)」の働きが弱まることで起こると考えられています。
•「脾(ひ)」の機能低下 → 消化・吸収がうまくいかず、水分代謝が乱れる。
•「胃」の不調 → 食べ過ぎやストレスにより、消化がスムーズに行われない。
•「腎」の弱り → 冷えや加齢により、体を温める力が低下し下痢につながる。
また、下痢の種類によっても原因が異なります。
•寒邪(かんじゃ)による下痢 → 冷たいものの摂取や体の冷えが原因。腹部を温めるツボ(関元・中脘など)への施術が有効。
•湿熱(しつねつ)による下痢 → 油っこいものや辛いものの食べ過ぎで腸に熱がこもる。清熱作用のある施術を行う。
•気虚(ききょ)による下痢 → 体力や胃腸の働きが低下し、慢性的に下痢が続く。補気作用のあるツボ(足三里・脾兪など)を刺激する。
下痢と鍼灸治療
鍼灸が下痢に効果がある理由は、主に 自律神経の調整・消化器の機能改善・血流の促進 という3つの働きによります。東洋医学と西洋医学の両面から解説しますね。
① 自律神経の調整(腸の働きを整える)
腸の動きは自律神経(交感神経・副交感神経)によってコントロールされています。
•ストレスや緊張が続くと、交感神経が優位になり、腸の動きが乱れて下痢や便秘を引き起こします。(過敏性腸症候群など)
•鍼灸は 副交感神経を優位にし、腸の過剰な動きを抑える ため、下痢を改善します。
② 消化器の機能改善(胃腸のバランスを整える)
東洋医学では、下痢の原因として 「脾(ひ)・胃・腎(じん)」の機能低下 が考えられています。
•脾(ひ) → 胃腸の消化・吸収をつかさどる。機能が弱まると、水分の多い便になりやすい。
•腎(じん) → 体を温める役割があり、冷えによる下痢は腎の機能低下と関連。
③ 血流の促進(腸の冷えを改善)
腸が冷えると、消化機能が低下し、下痢を引き起こしやすくなります。
•鍼やお灸を使って 血流を促進し、お腹を温める と、腸の働きが安定します。
•特に、お灸は、冷えによる下痢に高い効果があります。