自律神経失調症
自律神経失調症
「なんとなく調子が悪い」・「疲れが抜けない」・「不安やイライラが続く」・・・
そんな症状に心あたりはありませんか?
それは、自律神経のバランスが乱れているサインかもしれません。
自律神経失調症とは?
自律神経失調症とは?
自律神経失調症とは、自律神経のバランスが崩れることで、体や心にさまざまな不調があらわれる状態を指します。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2つがあり、私たちの呼吸・体温・内臓の働き・血流・睡眠など、生命維持に必要な機能を無意識にコントロールしています。この2つの神経がうまくバランスをとって働いていることで、体は健康な状態を保てます。
しかし、ストレスや生活習慣の乱れ、ホルモンの変化などの影響でこのバランスが崩れると、心身にさまざまな症状が出ることがあります。これが「自律神経失調症」です。

原 因
原 因
自律神経失調症は、ひとつの明確な原因というよりも、複数の要因が重なって発症することが多いです。
主な原因としては以下のようなものが挙げられます。
◆精神的・身体的ストレス
職場や家庭でのストレス、対人関係の悩み、過労など
◆不規則な生活リズム
睡眠不足、夜型の生活、栄養の偏りなど
◆ホルモンバランスの変化
思春期、更年期、産前産後など(特に女性に多い)
◆気候や環境の変化
季節の変わり目、気温・湿度の急変など
◆性格傾向
まじめで責任感が強い、完璧主義、感受性が高い など
主な症状
自律神経失調症の症状は個人差が大きく、多岐にわたります。以下のような心身の症状が同時に、または日によって変化しながら現れるのが特徴です。
<身体的な症状>
◆慢性的な疲労感
◆めまい・ふらつき
◆頭痛・肩こり
◆動悸・息切れ
◆胃腸の不調(便秘、下痢、胃もたれなど)
◆手足のしびれや冷え、発汗異常
◆睡眠障害(不眠、中途覚醒、早朝覚醒など)
<精神的な症状>
◆イライラ・不安感
◆気分の落ち込み(うつ状態に近いことも)
◆集中力の低下
◆緊張しやすい、パニック発作
日常生活での注意点
自律神経のバランスを整えるには、日々の生活習慣の見直しがとても重要です。
1.規則正しい生活リズムを心がける
◆毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝る
◆食事は1日3食、バランスよく
2.質の良い睡眠をとる
◆就寝前のスマホやパソコンは控える
◆寝る前にぬるめのお風呂やストレッチでリラックス
3.ストレスをためこまない
◆趣味や運動など、自分なりのリフレッシュ方法を見つける
◆人に話すだけでも心が軽くなることがあります
4.軽い運動を習慣にする
◆ウォーキングやヨガなど、無理のない運動が効果的
5.必要に応じて専門医に相談を
◆症状が長引いたり、日常生活に支障がある場合は、無理をせず医療機関にご相談ください
自律神経失調症は目に見えにくい不調だからこそ、周囲の理解が得られにくく、つらさを抱え込みやすい症状です。しかし、正しい知識とセルフケアの積み重ねで、改善することは十分に可能です。
東洋医学における自律神経失調症の捉え方
◆「気・血・水」のアンバランス◆
東洋医学では、体と心の健康は「気(エネルギー)」「血(けつ:栄養)」「水(すい:体液)」の流れと量のバランスによって保たれていると考えます。
自律神経失調症の症状は、以下のような「気・血・水の失調」としてあらわれることが多いです:
• 気虚(ききょ)・・・気が不足し、疲れやすい・倦怠感・やる気が出ない
• 気滞(きたい)・・・気が滞り、イライラ・不安・抑うつ・喉の詰まり感など
• 血虚(けっきょ)・・・血が不足し、不眠・めまい・集中力低下・不安感
• 瘀血(おけつ)・・・血の巡りが悪く、肩こり・冷え・頭痛・しびれなど
• 水滞(すいたい)・・・水分の代謝が悪く、むくみ・めまい・耳鳴り・下痢
これらの状態は、ストレス・生活習慣の乱れ・過労・感情の抑圧などで悪化します。
◆五臓と感情の関係◆
東洋医学では、「五臓(ごぞう)」=肝・心・脾・肺・腎がそれぞれ感情と密接に関係していると考えます。自律神経失調症に関わるのは特に以下のようなパターンです
◎「肝(かん)」の失調
肝は「気の巡り」をコントロールする臓器で、ストレスやイライラ、不眠に深く関わります。
→ ストレスで「肝の気」が滞ると、全身に影響を及ぼします。
◎「心(しん)」の失調
心は「神(精神・意識)」を司り、不安・動悸・不眠に関与します。
→ 心のバランスが崩れると、自律神経のような精神症状があらわれます。
◎「脾(ひ)」の失調
脾は「消化吸収・気血の生成」を担い、食欲不振・倦怠感・下痢などと関係します。
→ ストレスや過労により、消化機能が低下します。
◆東洋医学的な治療アプローチ◆
1. 鍼灸治療
ツボ(経穴)を刺激することで、気血の流れを整え、ホルモンバランスの調整、内臓機能や情緒の調整をおこないます。そのため自律神経の調整へとつながります。
2. 漢方薬
体質や症状に応じた漢方薬を使い、「気・血・水」を整えます。
たとえば…
• 抑肝散(よくかんさん)・・・イライラ・緊張・神経過敏に
• 加味逍遙散(かみしょうようさん)・・・女性の更年期症状や気分変調に
• 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)・・・喉のつかえ・不安感・動悸に
3. 養生(ようじょう)=生活改善の指導
• 食事・・・胃腸に優しく、冷たいもの・刺激物は控える
• 睡眠・・・早寝早起き、日光を浴びて体内時計を整える
• 感情のコントロール・・・怒りや不安をため込まず、適度に発散する
東洋医学では、自律神経の乱れも「体質の傾き」「気の巡りの乱れ」と捉え、根本的な体のバランス回復を重視します。
症状だけでなく、「なぜその人が今こうなっているのか」を深く掘り下げて治療を行うのが特徴です。
鍼灸と自律神経失調症
1. 自律神経にアプローチできる
鍼灸は自律神経系(交感神経・副交感神経)に直接作用するとされています。
•鍼を打つことで、皮膚・筋肉・神経を優しく刺激し、交感神経の緊張を和らげる
→ ストレスや緊張状態が続いて優位になった交感神経を落ち着かせ、副交感神経(リラックスモード)を活性化
•特に「耳」「首」「背中」などには自律神経と関係が深いツボが多く、そこを刺激することで、全身のバランスが整います
2. 血流と気の巡りを良くする
鍼灸は「気・血・水の流れを調整」し、滞り(=気滞・瘀血)を改善します。
•血流が改善すると、脳や内臓への酸素・栄養供給がスムーズになり、疲労感や冷え、内臓の不調が改善
•また、「気」が巡ることで、精神的な落ち込みやイライラも和らぎます
3. 自然治癒力を高める
鍼やお灸による刺激は、身体に「治ろうとするスイッチ」を入れる効果があります。
•鍼刺激は微細な「傷」として認識され、身体がその部位を修復しようとする
→ その過程で免疫・ホルモン・神経系の調整作用が活性化
•結果として、自己治癒力が高まり、ストレスに強い体質へと近づくことが期待されます
4. リラックス効果・ストレス緩和が高いから
•鍼灸治療を受けた後に、「体がポカポカする」「深く眠れる」「気持ちが軽くなる」と感じる人が多いです
•これは鍼灸が副交感神経(リラックス神経)を優位にし、コルチゾール(ストレスホルモン)を抑える効果があるためと考えられています
※現代医学の研究でも支持されている
近年の研究では、鍼灸が以下のようなメカニズムで作用することが分かってきています:
•脳内のセロトニンやエンドルフィン(気分を安定させる物質)の分泌促進
•視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)の調整作用
→ ストレス反応を緩和し、自律神経の安定に寄与
•迷走神経を刺激することで副交感神経を活性化
→ 呼吸や消化、心拍などの機能が落ち着く
◆なぜ効くのか?◆
鍼灸は「ツボ」への刺激を通じて、自律神経・血流・ホルモン・免疫系すべてに穏やかに働きかけることができる、
だからこそ、西洋医学だけでは改善しきれない「なんとなく不調」に効果を発揮します。
◆こんな方におすすめです◆
•ストレスを感じやすく、疲れやすい
•寝つきが悪い、眠りが浅い
•動悸や息苦しさがある
•頭痛・肩こり・めまいが続いている
•心療内科には抵抗があるけど、なんとかしたい
「整える力」は誰の中にもあります
東洋医学の考え方は、「症状を抑える」だけでなく、体が本来持つ“回復する力”を引き出すことに重きを置いています。
長引く不調に悩んでいる方、原因がはっきりしない不安を抱えている方こそ、一度東洋医学の視点でご自身の体と心を見つめ直してみませんか?
まずは、今のあなた自身の体と心の声に耳を傾けてみてください。
自律神経の不調は、「検査では異常がないのに、つらい」・・・ということが少なくありません。
けれど、あなたのつらさは、決して「気のせい」ではないのです。
鍼灸は、薬に頼らず、あなたの自然な回復力を引き出す治療法です。
「病院に行くほどじゃないけど、なんとかしたい」そんな方の心と体を、やさしく支えるお手伝いができれば幸いです。