首から肩のエリアにある筋肉に生じる個人の感覚で、いわゆる「自覚症状」なので、客観的に表すことがなかなか難しく、こわばった感じや不快感・こり感・重苦しさや痛みにいたる症候の総称です。頭痛や吐き気を伴うことがあります。

肩こりは人間が立って歩き始めたことが原因といわれます。
頭の重さは約5~6kgでボーリングの球くらいでとても重いのです。その重い頭を首や肩の筋肉で支えるわけですので、首や肩の筋肉はとても疲れてしまいます。普段から軽い体操などをして肩から首にかけての筋肉を鍛えておくことが予防の一つです。
肩や首の痛みは、初期症状です。
更に、症状が進むと、目のかすみ、頭痛、歯の痛みが起こります。その症状をそのまま放置すると、自律神経が乱れ始めます。
そうなると、肩こりとは関係のなさそうな症状が現れ始めて深刻な状況となってしまいます。
微熱・疲労感・不眠に加えて、内臓の調子が乱れてしまうこともあります。ここまできてしまうと、日常生活にも支障をきたしてしまいます。
ただでさえ不快な肩こりですが、深刻な状況になる前になんとか改善したいですよね。
<肩こりの原因>
【運動不足による筋肉疲労と血行不良】
日頃から体を動かしていないと、筋肉が普段使われないので、筋肉の緊張や疲労が起こりやすく、肩や首筋がこります。さらに、運動不足は血行不良を招き、肩こりの発症の原因になります。
【同じ姿勢でのデスクワーク】
同じ姿勢で長時間パソコンに向かっていることで、首や肩周辺の筋肉に緊張が続き、肩こりの症状があらわれます。
【眼精疲労】
パソコン、携帯電話などによる長時間にわたる目の酷使や、メガネの度が合っていないなどの慢性的な目の筋肉の緊張や疲労が、首のこりや肩こりの症状を引き起こすことがあります。
【ストレスによる緊張】
肉体や精神にストレスを受けると、筋肉を緊張させる自律神経の働きが活発になります。そのため、肩周辺の筋肉が緊張し、肩こりが起こります。一時的なものであれば問題ありませんが、連日ストレスにさらされ筋肉に過剰な緊張状態が続くと、肩こりが慢性化することがあります。
【寒さによる肩の筋肉の緊張、自律神経の乱れ】
寒い場所や冷房の効いた部屋でずっと過ごしていると体に不自然な力が入り、筋肉が緊張します。さらに、寒さによって自律神経の乱れを引き起こすために、筋肉の緊張が強まり、肩こりの原因となります。
<日常生活でできる予防法>
【体を動かして血行を良くする】
体に負担が少なく、全身の筋肉をバランス良く使う運動を、少しずつでも行うようにしましょう。ウォーキングやサイクリング、水中ウォーキング、ストレッチ、ラジオ体操などがおすすめです。
【肩や首を冷やさない】
夏のエアコンによる冷やしすぎや、冬の寒さに身を縮める筋肉の緊張は、肩こりの原因です。 冷気をなるべく避け、蒸しタオルやカイロなどを使って、肩と首を温めましょう。
【仕事の環境を見直す】
パソコンの画面との距離は40cm以上離し、目線が下になるように位置を調節しましょう。そして、背筋を伸ばして椅子に深く腰掛け、キーボードは自然に手をおいたときに、ひじの角度が90~100度くらいになるようにしましょう。デスクワークが続く場合は、1時間に1回は伸びをするようにしましょう。
【効果的な入浴で血行を良くする】
38~40℃くらいのぬるめのお湯にゆったりとつかり、血行を良くしましょう。お風呂からあがったら、水気をよく拭いて湯冷めしないように気をつけましょう。
<肩こりを起こしやすい体型>
なで肩、極端なやせ型や肥満体、猫背の人は肩こりになりやすいといわれています。 なで肩や極端に痩せている人は、首や肩の筋肉があまり発達していない場合が多く、疲労しやすい傾向にあります。 肥満体の人は、頭や肩の重さが増すので、筋肉に相応の負担をかけ、肩こりを起こしやすくなっています。 猫背のように、丸まった姿勢は、肩や背中の筋肉をつねに緊張させている状態なので、血流が悪くなり、肩こりを招くことになります。
<鍼灸と肩こり>
【筋肉の緊張が緩む】
鍼は凝り固まった筋肉に対して直接アプローチすることで、鍼灸の作用である血管を拡張させ血流を促進させる働きが高まります。
血流が改善されることで、筋肉に酸素が運ばれ、ほぐれていきます。同時に痛みを引き起こす発痛物質も流され、痛みが和らぎます。
【内臓の働きの改善】
鍼治療では、こりがある部分だけではなく、手や足のツボにも鍼やお灸をします。 ツボに刺激を与えることで、体の反応により内臓の働きが活性化されます。内臓の働きが活発になると体全身の代謝が上がり、血流循環が改善します。
【自律神経のバランスを整える】
頭や首に鍼やお灸をすることにより、自律神経の乱れを調整することができます。 肩こりは自律神経の乱れによっても引き起こされることもあり、鍼・灸でバランスを良くしてあげることで、血管が拡張し、血行が良くなります。鍼灸にはリラックス効果もあります。
東洋医学には「気(き)・血(けつ)・水(すい)」という概念があり、肩こりの原因はこれらの異常によって起こると考えられます。具体的には、血が足りない状態(血虚)、血がとどこおっている状態(お血)、水分がたまっている状態(水毒)、気が不足している状態(気虚)などがあります。また、いくつかの状態が重なって肩こりが現れたり、悪化したりしている場合も少なくありません。
- 気虚(エネルギー不足によって、熱が産まれにくくなっている。疲れやすく、カゼを引きやすい、寒がりといった症状も。)
- お血(血液の流れや働きに障害が起こり、熱が運ばれにくくなっている。便秘気味で月経痛や肌荒れなどを伴う。)
- 水毒(体の水分量が多かったり、偏ったりしているため、水分がたまることにより肩こりが起きます。頭痛や頭重感、むくみ、耳鳴り、頻尿などを伴う。)
こうした体質や状態、肩こりに伴うほかの症状などを考慮して、その人にあった治療法が決まります。ただ、肩こりというのは長い間に少しずつ進行してきた症状ですから、短期間で症状がとれるものではありません。長い時間をかけて、治療をしていく必要がありますし、鍼灸治療だけでなく、日常生活から改善していくことも大切です。